† 僕はその罪を認めることが出来なくて、逃げ出した †
「あ、正臣」
俺は逃げるために、沙樹の病室に訪れた。
でも、そこには沙樹ともう一人見知らぬ人間。
「・・・・・・誰ですか?」
「正臣。この人がさんだよ」
「え?・・・、さん・・・なんで、」
。
沙樹が言うには、あの・・・折原臨也が一番大切にしている人間らしい。
でも、なんで、そのが沙樹の病室にいる?
「私?私は沙樹ちゃんのお見舞い。じゃー沙樹ちゃん。彼が来たし、私は帰るね」
「さん、また臨也さんとも来て下さいね」
また?
臨也さんと一緒に?
そんなこと考えていたら、さんの姿はなくなっていた。
「正臣まで来てくれて嬉しいな」
「・・・あの人、よくここに来るのか?」
「うん、毎週お見舞いに来てくれるよ」
「・・・・・・」
「可愛い人でしょ、さんって」
「・・・あぁ、でも、なんか雰囲気が」
少し、折原臨也と似ている。
でも、折原臨也のものとは違う。
「臨也さんと似てる?」
「・・・あぁ」
「仕方ないよ。さんは臨也さんに愛されてるもん」
「・・・・・・じゃあ、あの人も臨也さんに死ねって言われたら死ぬのかな」
「さんは死なないよ、絶対」
「なんで?」
「さんは臨也さんのことを愛してるから。その愛は崇拝的なものじゃないから」
つまりは、自分たち・・・
臨也さんの周りに群がる人間とは違うって言いたいのか?
「正臣もさんといっぱい話してみるといいよ。さんは臨也さんとは違うから」
俺は、沙樹に別れの言葉を紡ぎだすこともできずに、
ただ、逃げるようにあの人の背中を追いかけた。
沙樹に背中を押されて。
◇◇◇
「さん!」
「あ、正臣くん。沙樹ちゃんのお見舞いは終了?」
「はい」
「ふーん。で、私に何か用?追いかけてきたんだよね」
「沙樹に言われたんです。さんといっぱい話してみたらいいって」
「んーじゃあ、正臣くんが私に対して思ってることを教えてもらおうかな」
俺がさんに対して思ってること・・・
それは、
「あんたは・・・あの人のこと何も知らないから笑ってるんだ」
あの人=折原臨也さん。
きっとこの人はあの人に愛されてるからこそ、臨也さんの綺麗な部分しか知らない。
あの綺麗な顔の奥にある歪んだ感情を何も知らない。
だから、あの人のことを愛してるなんて言えるんだ。
そうじゃなかったら・・・
愛してるなんて、言えないだろう。
「知ってるよ、全部。私は臨也がやってきたこと全部知ってるよ」
「え?」
「そりゃもう、目を瞑りたくなるくらい酷いこともいっぱいしてるって知ってるんだよ」
「じゃあ、なんで、」
「臨也と一緒にいるのか?あまつさえ、愛してるのか?」
俺が言おうとしたことをさんは先に言った。
あぁ、やっぱり・・・見透かされてるんだ。
初めて逢ったときに感じた見透かされてる感はおそらく、全てを知っているから。
臨也さんがした全てのことを知っているからあの見透かされてる目をしてたんだ。
「どんなにヒドイ奴でも・・・それでも、臨也のこと私、愛してるんだよねー」
「・・・直させようとはしないんですか?」
「ほら、人には欠点の一つや二つあるし。とりあえず、それが臨也だから仕方ないでしょ」
「・・・・・・」
「正臣くんも欠点の一つや二つあるでしょ?」
「まぁ、」
「それと一緒だよ」
「・・・あーあ、降参です」
この人には勝てない。
でも、この負けを認めるということは逃げることじゃない。
俺は逃げたわけじゃない。
「でも、俺はこれからずっと逃げ続けるんだと思います」
沙樹と、
臨也さんと、
黄巾賊と、
過去から。
「うん。でもね、戦うのは紀田正臣くんだよ」
「え?」
「今はそれだけ言わせてね。あとは・・・過去は寂しがり屋さんなんだよー」
「さんって不思議な人ですよね」
「んーよく言われる」
「もし、沙樹に逢う前にさんに逢ってたら俺はさんのこと好きになってたかもしれませんよ」
「あら、嬉しい。でも、私は正臣くんを好きにはならないね」
「ははっ簡単に言ってくれる。俺の精一杯の告白だったのに」
「だって、私はもう愛してる人がいるから」
「俺が臨也さんよりも前に出逢ったとしてもですか?」
「うん。まぁ、普通に考えて臨也より先に逢うなんて無理なんだけどね」
この人は恐ろしい人。
人の心を奪い、そして、壊す。
でも、その壊し方は優しいもので・・・壊されてもこの人のことを嫌いにはなれない。
それがこの人の魅力、みたいなものかな。
「今の俺は絶対にさんに恋はしません」
「私も正臣くんに絶対に恋はしないなぁ」
「でしょうね」
† 僕はその罪を認めることが出来なくて、逃げ出した †
(この人のあの人への愛はホンモノ。敵うはずもない)
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