† 所詮私もただの駒でしかなかった †










さんは臨也さんの幼馴染なんですよね?」


「うん。もうかれこれ20年くらいのお付き合いになってるねー」


「すごいなぁ・・・臨也さんとずっと一緒にいるなんて」


「そんなすごいことじゃないけどね。ただ、家がお隣同士だったってだけ」


「本当にうらやましいなぁ・・・さん」


「そーう?」


「はい、すごくうらやましいです」


「そんないいものでもないけどねー。あいつが男も女も問わず泣かせてきたのもしっかり見てきたし」


「臨也さんらしいですね」


「もうね、すごかったんだよ。私に対する恨みつらみもカナリのものだったし」




まぁ、私になんかやった人間は・・・

人間ラブな臨也がしっかり仕返ししてくれちゃってたけど。




「でも、さんはずっと臨也さんと一緒にいたんですよね」


「うん」


「ずっとお互いに好き合ってたんですか?今みたいに」


「んーん。臨也はわかんないけど、私が自覚したのは高校入ってから」


「そうなんですか?もっとずっと前からだと思ってました」


「うん。高校で臨也とシズちゃんが逢って、で・・・まぁドンチャン騒ぎになって気づいた」




愛が足りない。

臨也かシズちゃんか、どちらかではダメ。

両方欲しい。

二人の愛が欲しい。

それは一種の欲望、深い、深い欲望。




「・・・臨也さん、怒らないですか?あまり怒るイメージはないんですけど」


「全然。臨也もシズちゃんもわかってたんだよね、どちらかじゃダメだって」




私はどちらかを選べない。

二人とも大好き、愛してる。

私の愛は半分こ。

どちらかへの愛が大きいわけもなく、ただ、対等に全く同じ愛。




「私だったら絶対に臨也さんだけいればいいのに」


「私には臨也だけじゃ足りないんだよねー」


さんって欲張りですよね」


「言うねぇー沙樹ちゃん」


「でも、だからこそ臨也さんと一緒にいられるのかも・・・ずっと」


「・・・沙樹ちゃんはさーホントは臨也が一番ってわけじゃないでしょ?」


「・・・え?」




沙樹ちゃんが臨也を見る目は愛が感じられない。

崇高、崇拝、憧れ、そう・・・いうなればカミサマ。

臨也を神様のように見ている。

それは、愛じゃない。




さんって鋭い」


「まぁ、あの臨也と長い時間一緒にいるから仕方ないんですよー」


「私、彼氏が出来たんです。紀田正臣っていって・・・すごく可愛いんです」


「へぇー」


さんも知ってるでしょ?」


「あ、バレてる?」




紀田正臣。

黄巾賊のトップ・・・確か、将軍だったかな。

まだ、実物は見たことないけど。

とりあえず・・・彼は臨也の駒。

そして、沙樹ちゃんも・・・




「好きなんだ、彼のこと」


「・・・はい。初めは臨也さんに言われて近づいたんですけどね」


「全くもって女心がわかんない奴だよねー臨也って。人間大好きなくせに」


「でも、私は・・・正臣のことすごく好きなのに、まだ、臨也さんに縋ってるんです」


「それでも好きなんだね、彼のこと」


「はい。彼言ったんです、私の臨也さんへの信仰心を改めろって」


「それは珍しい」




あぁ、でも・・・

彼はまだ、臨也のことを知らないんだろうな。

知ってしまったら最期、逃れられない、逃げられない。

気づいたときにはもう、戻れない。

臨也はそんな人間。




「ねぇ、沙樹ちゃん」


「なんですか?」


「・・・やっぱり、なんでもない。あ、今度その正臣クンに逢わせてよ?」


「正臣をさんに逢わせるのはちょっと怖いな」


「え、なんで?」


さんに心を奪われてしまうかもしれないから」


「何それ」


さんには臨也さんとはまた違う魅力があるってことです」











† 所詮私もただの駒でしかなかった †

(幸せになって欲しい、なんて私が言うと偽善っぽいね)



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