† 結局、僕は逃げてるだけなんだ †










「沙樹ちゃん」


さん」


「はい、コレお見舞い」


「ありがとうございます」




さんはいつもお見舞いに来てくれる。

臨也さんと一緒だったり、

今日みたいにさん一人だったり。




「さっき、臨也さんも来てくれたんです」


「あ、うん。知ってる」


「臨也さんにもさんにも逢えて、今日はラッキーな感じです」


「じゃあ、あとは正臣くんが来てくれたら完璧?」


「来てくれたらいいんですけどね」


「あぁ、彼はまだ・・・逃げてる最中だからね」


「はい。本当にさんも何でも知ってますよね」


「そりゃ、繋がってるから」




さんが繋がってるのはもちろん、臨也さんと。

臨也さんに出逢って、ちょっとしてからさんに出逢った。

それは、多分偶然。

臨也さんが何かを、したわけではないと思う。




「・・・さんも知ってる通り、最近よく来てくれるんです。正臣」


「ねぇ、沙樹ちゃん」


「はい?」


「今でも正臣くんのこと、好き?」


「はい、好きです。だから、私は待ってるんです」


「正臣くんが戻ってくること、を?」


「はい、臨也さんが言ってたんです。正臣は必ず私のところに戻ってくるって」


「そっかぁ・・・でもね、沙樹ちゃん。臨也の言葉ばかり信じてたら、正臣くんは・・・」


「・・・わかってるんです」


「・・・・・・」


「でも、コレが私の欠点というか・・・どうしようもないんです」


「そっか。じゃあ沙樹ちゃんも正臣くんと同じで、逃げてるんだね」


「・・・・・・」


「あぁ、でも、沙樹ちゃんは逃げながらも前に進もうとしてるのも私、わかってるよ?」




・・・そっか。

さんは私の足のことも知ってるんだ。

不安定ではあるけど、歩ける私の足。




さん」


「ん?」


さんは臨也さんのこと信じてるんですよね?」


「んーん。違うよ、沙樹ちゃん」


「え?」


「私は臨也のことを愛しちゃってるの」




臨也さんは素敵な人。

でも、同時にとても怖い人。

きっと、臨也さんのことはさんにしか愛せない。




「沙樹ちゃん。沙樹ちゃんの道を選ぶのは沙樹ちゃんだよ」


「でも、私の歩いている道は・・・臨也さんが作った道です」


「うん、だからね・・・選ぶのは沙樹ちゃんなの」


「え?」


「沙樹ちゃんは必ず選ばなくちゃいけなくなる」


「何を、って聞いてもいいですか?」


「答えてもいいの?」


「・・・・・・さんに教えてもらわなくても、私にわかりますか?」


「うん、きっとわかるよ。だから私は、言わない」


さんって優しいけど、たまに意地悪ですよね」


「まぁ仕方ないんじゃないかな?私は黒い悪魔の幼馴染ですから」




黒い悪魔=臨也さん。

でも、さんは臨也さんとは何かが違う。

そう・・・例えるなら、

臨也さんは・・・カミサマみたいな存在。

でも、さんは・・・お姉ちゃん。

臨也さんとはまた違った意味で縋りたくなる存在。




「さぁーってと、じゃあ私はそろそろ帰るね」


「はい、ありがとうございました」


「また来るねー。あ、食べたいものとかあったらメールしてね?買ってきてあげるから」


「ありがとうございます」


「じゃ、またねー」




















◇◇◇
























「臨也、なんで?」


「君を待ってたんだよ」


「そっか」


「素っ気ないなぁ」


「病院、だからじゃない?」


「ご尤もで」


「ねぇ、臨也」


「ん?」


「沙樹ちゃんの足って、どうなの?」


「神経は繋がってるよ。後は本人次第さ」










† 結局、僕は逃げてるだけなんだ †

(カミサマと対等な人だけど、カミサマじゃない)



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