† ああ、何て世界は歪んでいて、僕も君も歪んでいるんだろう †
ピンポーン。
「あぁ、いいよ。俺が出るから」
そう言って、折原臨也は楽しそうに玄関へ向かった。
恐らく、誰が来ているかわかっているのね。
◇◇◇
「全くいきなり家に来いなんて何よぉー」
「君には紹介しておこうかと思ってね。無駄な嫉妬されても困るし」
「は?嫉妬なんて・・・」
折原臨也に招かれるように現れたのは、一人の女の子。
・・・・・・ロリコンだったのかしら?
「あー矢霧の」
目の前の少女は私を見た途端、納得したように、矢霧の、と言った。
一見、こんな世界に身を置く折原臨也のような人間とは関わりがなさそうな女の子。
そんな彼女が、矢霧なんて知っているとは思えない。
でも、彼女は私が矢霧製薬の人間だと知っている。
「・・・あなたがさん?」
一つの仮説が生まれる。
この、少女が・・・噂に聞くではないのかと。
「あ、はい。綺麗なお姉さんは矢霧波江さんですよね?」
「・・・えぇ」
「ってことは、・・・セルティの首、今ここにあるんだ」
「・・・・・・!!」
首。
デュラハンの首。
セルティと言う名の忌々しきデュラハンの首。
「ははっ鋭いなぁは。あぁ、見たい?親友の首を。君まだ見たことなかったよね?」
「見たくなーい。だって私は今のセルティと親友なんだもーん」
「君、セルティに対しては新羅と似てるよね」
「んーだって、セルティは私の大好きな親友だもん!」
「の数少ない友達だもんね?」
「臨也に言われたくない」
「俺は友達も多いよ?人間みんな愛してるからね」
「はいはい、そんなこと知ってるよーってか、すみません波江さん」
「は?」
「ひじょーに面倒な人間ですけど、臨也の面倒みてやってください」
「・・・あなたは彼の恋人ではないの?」
「違いますよー。愛しちゃってますけど」
「・・・あなたは愛してる人間の傍に違う女がいても気にしないの?」
私だったら気が狂いそうになるわよ。
あの女が誠二の傍にいると考えただけで。
あの女だけではない。
誠二の傍にいる女を見るだけで殺したくなるわ。
「あー危険分子だったら迷わず排除しますけど、波江さんは違うってわかってますから」
「・・・そう」
「愛されてるなぁー俺。もちろん、俺も君を一番愛してるよ」
折原臨也には溺愛する女がいるとは聞いていたけど・・・
まさか、こんなに普通の女の子だとは思わなかった。
もしかすると、この子も折原臨也の手駒に過ぎないかもしれないわね。
「てか、臨也ーのど渇いたんだけど」
「冷蔵庫に色々入ってるから好きなの飲んでいいよ」
「ありがとー」
折原臨也は愛の言葉を平気でペラペラと紡ぐような人間。
特別なんてあるとも思えない。
「あぁ、波江さん」
「・・・何?」
「は俺の手駒じゃないよ」
「そうなの?」
「そうだよ。君に言っても仕方ないことだけど、は唯一俺が愛してるお姫様だからね」
「そんなこと私に言ってもいいのかしら?」
「別にいいよ。知ってる人間は知ってるし、・・・に手を出すような馬鹿はどうなっていても知らないけどね」
「しかし、あなたロリコンだったのね」
「ははっは俺と同じ歳だよ」
「は?」
「あぁ見えても、社会人だし。普通に一般企業に勤めてるよ、は」
社会人ですって・・・?
高校生にでも普通に見えるわよね。
「まぁ、俺の幼馴染だし、大学のとき俺の仕事の手伝いもしてたから色んな意味で色んなことを知ってるけどね」
「じゃあ、彼女も相当歪んでるのね」
「そんなことないよ。まぁ・・・歪んでないと言えば嘘になるけどね」
「まぁ、彼女が歪んでようが歪んでなかろうがどうでもいいわ」
「あぁ、でも・・・に手を出したら君でも許さないよ」
「別に興味ないわ」
「あっそ」
† ああ、何て世界は歪んでいて、僕も君も歪んでいるんだろう †
(強いて言えば、折原臨也と同じ歳で幼馴染というのは少し興味があるわね)
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