† 思い出は美化されていくもの †










「・・・仮装行列?それとも先輩の一人七五三?」


「うわっ相変わらずこのガキ失礼だ」


「・・・アンタ、口さえ開かなかったら可愛いのにな」




そうだ、顔は可愛いほうだと思う。

それこそ、10人いれば9人は振り返るくらいに。

でも、口を開けば最後。

顔に似合わずな生意気口調。




「衛藤くん」


「何?葵さん・・・あぁ、葵さんは似合ってると思うよ」


「さっきのさんへの言葉は訂正してもらいたいな」


「は?」


さんは喋っていても可愛いよ」


「・・・・・・」




・・・・・・。

葵さん、ベタ惚れ過ぎる。




「イヤイヤ、加地くん。確かに私ってば口悪いから訂正の必要なくない?」


「アンタ引っかかるところそこなわけ?」




これはきっと・・・

葵さんの気持ちなんて気づいてもいない。

鈍感かよ、先輩って。




「あーほら、可愛いって言ってもらえるのは純粋に嬉しいし」


「てか、なんでは一緒じゃないわけ?」


「学院祭の劇の宣伝中だからでーす。あ、はアンサンブルに出るって」


「マジ?」


「うん、マジ」


「あ、そうだ。この前アンタのこと学校で話したら知ってる奴結構いたよ」


「あ、そーなんだ」


「え?さんと衛藤くんって同じ中学?」


「うん、らしーね。私全然記憶にないんだけど」


「へぇ・・・いいなぁ・・・」


「私のこと知ってる人なんて言ってたのー?」


先輩は可愛いかった」


「おーそれはなんか褒められてない?」


「ホントそんな発言ばっかりされたけど、全力で否定しといたから安心しなよ」


「え、否定しないでよー。折角可愛いって言ってくれてるんだし」


さん!」


「ん?」


「僕はさんはいつでも可愛いと思うよ」


「加地くん優しいー。生意気な餓鬼の桐也とは大違い」




なんていうか・・・先輩も大概ガキなんだと思う。

いったい、暁彦さんも葵さんもこの人のどこに惹かれるものがあったんだか・・・

俺にとってはのほうがよほど興味深い。

まぁ、好みなんて人それぞれだってのもわかってるけど。




「じゃあ、桐也は加地くんに任せてちょっとつっちーのところにいってきまーす!」


「はぁ?」


「あっさん?!」


「ごめんねー加地くん。桐也の相手してあげてくださいー!!」




ちょっと、先輩意味わかんないんだけど!!

なんで、よりにもよって葵さんと二人にするかな・・・

ホント、考えてることが意味がわからない。




















◇◇◇





















「えっと・・・衛藤くん」




どうしようかな・・・

何を話したらいいのかもわからない。




「あぁ、葵さん。この前のアンサンブルコンサートよかったよ」


「え?」


「葵さんヴィオラ向いてると思うよ」


「あ、ありがとう!」


「だけど、一つ助言」


「え?」


「気づいてると思うけど、先輩ってカナリ鈍いと思うよ」


「まさか、君にさんのことを助言されるとは思わなかったなぁ・・・」


「てか、先輩のどこがいいわけ?」


「ずっと、何年も片想いしてるんださんに」


「は?」


「僕がヴァイオリンを習っていたころに、彼女は僕のヴァイオリンが好きだといってくれたんだ」




自分さえも好きになれなかった、僕のヴァイオリンの音色。

その音を彼女は好きだと言ってくれた。

好きにならずにはいられなかった。




「ふーん・・・それって本当に先輩のことが好きなわけ?思い出が美化されてるんじゃなくて?」


「初めは、僕の音が好きだと言ってくれたから彼女のことを好きになった。だけど、今は違うんだ」




誰でもよかったわけじゃない。

さんだから、僕は好きになったんだ。

一緒にいる時間は短いけれども、僕に笑いかけてくれるさんが好き。

僕のことを見てくれるさんが好き。

星奏学院に転入してくる前までは思い出の中の彼女に恋をしていた。

でも、今は違う。




「僕は・・・毎日、彼女に恋をしているんだ」


「毎日か。まぁ、葵さんいい顔してるし、いいヴィオラを奏でてるからいいんじゃない?」


「ありがとう。あっ長々とごめんね!」


「別に」


「月並みなことしか言えないけど、衛藤くんも頑張ってね、さんのこと!」


「・・・どーも」










† 思い出は美化されていくもの †

(さーって、彼女を探しに行こう!)



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