† 小さな手、いつも俺を支えていた †










「ね、れーん。一つ聞いていい?」


「・・・なんだ?」


に告白したでしょ」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・あ、ちなみにに聞いたわけじゃないよ」


「なぜ、そう思う?」


「んー音かなぁ?蓮の音色にそんな気持ちがいっぱい見えたから」


「君はいつもそんなことを言うな」




俺がを好きになって、

その気持ちに気づいての前でヴァイオリンを演奏すれば・・・

彼女は、音が変わったと言い、

に恋をしていることを言い当てた。

そして、今回も・・・




「え?」


「・・・どうしても君には音で伝わってしまうようだ」


「そりゃ、ずっとずーっと蓮の音聴いてきたんだよ?そんな私がわからないはずがないでしょ」


「・・・そうだな」




俺がヴァイオリンを始めたころがから、ずっと。

ずっと、は俺のヴァイオリンを聴いてくれている。

飽きもせず、ずっと・・・




「留学の話もした?」


「・・・あぁ、いつとは言っていないが」


「そっかそっか。れーん、頑張ったね」


「・・・ありがとう」




は俺にとって家族のような存在だ。

妹のようであり、姉のようでもある存在。

昔からずっと、感情表現が苦手な俺の想いを周りに伝えてくれてきた。




「・・・もう一度、ヴァイオリンを奏でる気にはならないか?」


「私がー?」


「あぁ」


「そうだね、私の・・・ヴァイオリンもたまには奏でてあげないと可哀想だもんね」


「俺はずっと君のヴァイオリンが好きだった」


「そんなこと言うの蓮くらいだよー」


「君がヴァイオリンを続けていれば、俺にも君の気持ちがわかったかもしれないな」




音色に感情は表れるから。

この、不器用な彼女の感情も伝わるのかもしれない。




「ありがと、蓮。心配してくれてるんだね」


「・・・当たり前だ。君は俺にとって妹であり、姉のような存在なのだからな」


「あはっ確かに。私にとっても蓮はお兄ちゃんであり、手のかかる弟だもんね」




君が俺の感情がわかるように、

俺も君の感情がわかればよかったと思う。

そうすれば、彼女は・・・もう少し、素直になれたかもしれない。




「れーん。私は大丈夫だよ?」


「・・・君は嘘つきだな」


「え?」




だから、願わくば・・・

彼女が心から素直になれる存在が現れますように。

俺は願うことしかできないから。




「あまり強がってばかりいると君が壊れてしまう・・・と思う」




すまない。

俺は君が素直になれる存在にはなれなかった。

長年一緒にいて、一緒にいたのに・・・

君は一度も俺にもたれかかろうとはしなかった。

俺は何度も君に支えられていたのに。




「蓮の言ってることよくわかんない」


「・・・そうか」


「でも、心配してくれてるんだよね。私のこと」


「あぁ」


「ありがとね、蓮」


「いや、」




礼を言わなければいけないのはむしろ俺のほうだ。

君はいつも俺を支えてくれているから。




「ねぇー蓮。私のヴァイオリン弾いてよ」


「は?」


「持ってくるから、ちょっと待っててねー!」




















◇◇◇




















「はい、れーん。弾いて弾いて」


「・・・あぁ、わかった」




彼女のヴァイオリンはサイレントヴァイオリン。

俺は、自分のヴァイオリン以外で唯一、彼女のこのサイレントヴァイオリンを奏でるのが好きだ。










〜♪










「んーやっぱりいい音。蓮って私のヴァイオリンと相性いいよね」


「昔からよく弾いているからな」


「うん。本当に・・・このヴァイオリンは幸せだね。蓮に奏でてもらって」




俺が奏でるよりも、むしろ・・・

このヴァイオリンはに奏でてもらいたいと思っているだろう。

だけど、彼女はきっと弾かない。

特に、俺の前では。










† 小さな手、いつも俺を支えていた †

(俺はずっと君の音が好きだった。)



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