† 俺が一度捕まえた獲物を逃がすとでも思っているのか? †










「あ、柚木先輩」


「あぁ、お前か」


「今日は一人なんですね」


「俺だってたまには一人になりたい時だってある」


「うん、確かに。あ、じゃー私も行きますねー」


「ダメだよ」


「へ?」


「お前はダメ。お前はここにいるんだよ」


「何それ矛盾」


「いいんだよ、俺が決めたから」


「あーなるほど、柚木先輩理論」




喋るを軽く無視してその小さな肩にもたれかかる。

感じるあたたかさ。

それが、思ったより心地がいい。




「・・・なんだか柚木先輩が甘えただー」


「たまにはいいだろ」


「たまにですよー基本的に私が人にもたれていたいんですからねー」


「知ってるよ。・・・、寒くはい?」


「大丈夫でーす」


「そうだよな、お前は結構丈夫だし」


「あ、それって褒められてるんですよね」


「あぁ、だから・・・今から一時間少し黙ってろ」


「は?」


「少し寝かせろ」


「へ?寝るなら保健室行ったほうがよくないですか?あのベッド案外ふかふかだし」


「うるさいよ、俺はここがいいんだ」




お前の傍がいい・・・

なんて、絶対に言ってやらないけど。




「・・・・・・意味わかんないー・・・て、もう寝てるし」




















◇◇◇




















「あっさん!やっと見つけたよ」


「加地くん、しぃー」


「え?」


「安眠妨害したら怒られるよー」




もちろん、にっこり笑顔で。

でも、私からしたらにっこり笑顔のほうが怖いんですー。




「・・・僕、柚木さんが寝てるところ初めて見たよ」


「私もあんまり見る機会ないなぁー」




柚木先輩、たまに肩貸せとか言ってくるけど、車の中で。

学院内ではホント珍しいなぁー。




「あ、そうだ。さん聴いて、次のアンサンブル曲」


「え、加地くん?」




私の話スルーですか?

柚木先輩もヴィオラの音だったら簡単に目覚めちゃうって!!!










〜♪










「・・・いい目覚ましになったよ、加地くん」


「そう言ってもらえてよかったです」




・・・空気冷たっっ!!!

カナリ冷たい。

でも、なんで当事者であるこの二人はそんなの微塵も見せないくらい笑顔なのかなぁ?!

多分、今この状況で一番の被害者は私だって信じてる!!!




「でも、空気は読もうか」


「空気は読んだつもりですよ・・・僕のためには」


「なるほどね」


「柚木先輩も起きたことだし、私はカフェテリアに行きまーす」




逃げるが勝ち!!

今は何も言わずに私を逃げさせてください、お願いだから。




「あ、僕も行くよ、ちょうど喉が渇いたし」


「迷惑をかけてしまったみたいだし、お茶でもご馳走するよ」


「やった!加地くん、柚木先輩がお茶奢ってくれるって!私、駅前のカフェがいいでーす!」


「駅前はまたの休みにしようか」


「うん。駅前のカフェのケーキ結構お高いからなかなか手を出せないんですー」




ともなかなか食べれないねぇーってよく言ってるし。

学生さんな私たちにはなかなか手が出せないお値段なんです!

でも、柚木先輩が奢ってくれるなら心置きなくいただけちゃう!!

・・・・・・あ、でも、柚木先輩お茶でもご馳走って言ってた・・・

お茶=ケーキじゃない。




「あ、柚木せんぱーい。・・・ケーキダメ?」


「構わないよ。好きなだけ食べて」


「いや、いくら駅前のケーキ好きでも一個で十分ですー。てか、太るからイヤ」




駅前のカフェのケーキって結構ボリュームあるし。

一個でもカナリの高カロリーだと思われる。

でも、食べたいっていう欲望は消せない!!!




「柚木さん」


「何かな?加地くん」


「さっきの展開からすると・・・僕も一緒に行っていいんですよね?」


「加地くん、それ本気で言ってるのかな?」


「はい、結構本気に。あ、でもケーキは奢ってくれなくて結構ですので」


「・・・・・・仕方ないね」










† 俺が一度捕まえた獲物を逃がすとでも思っているのか? †

(柚木先輩と加地くんとカフェに行くなんて、なんか珍しい感じだよね!)



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