† 懐かしい音楽にあの時を思い出した †










なんか、帰る気にもなれなくて・・・

柚木先輩と別れたその足で普通科の屋上に上がってきてみれば見知った人影。

ただ一つ、知らなかったことは・・・加地くんがヴィオラを弾いてること。




「・・・加地くん、ヴィオラ弾けるんだ」


「あ・・・カッコ悪いところ見せちゃったね」


「んーん」




カッコ悪いところなんてなかったよ。

だって、加地くんの音色からは、音楽が大好きだって気持ちが伝わってくるから。

・・・あれ?同じような音色、私聴いたことある。




「ヴァイオリンと蓮・・・そっか、わかった」


「え?」


「加地くんに私、逢ったことあったね」


さん?」


「昔、私がコンクールで花飾りあげたの加地くんだ」




蓮に渡すつもりの花をあげようとしたらそれは受け取ってもらえなくて・・・

で、私が頭につけてた花飾りを欲しいって言われてあげたんだっけ。

あぁーなんか鮮明に思い出してきた。




「・・・・・・思い出してくれたんだ。ちょっと恥ずかしいな」


「うん、時間かかっちゃったけど」


「ありがとう」




あ・・・この笑顔知ってる。

やっぱり、あの時の男の子は加地くんだったんだ。




「ヴァイオリン辞めちゃったんだね」


「うん、でも今はヴィオラを弾いてるよ」


「よかった」


「え?」


「音楽を辞めてなくて」


「辞めないよ」


「加地くん?」


「君のあの時の言葉があったから僕は・・・」


「え?」


「君の言葉があったから僕はもっと音楽が好きになったんだ」


「そっか。いいなぁ・・・」


「え?」


「ヴァイオリンもヴィオラも羨ましい」


さんも何か楽器やってるの?」


「私は聴く専門。昔から月森家の音楽に囲まれてたからねー」


「それは羨ましいな」


「うん。私のささやかな自慢ですよー」


「月森のヴァイオリンはすごいね、本当に」


「蓮の指は魔法の指だから」




てか、音楽を奏でる人はみんなそう。

私の中では本当に魔法を使ってるみたいに感じる。




「加地くんも私からしたら魔法だよ、本当に」


「・・・ありがとう」


「だからね、日野ちゃんのアンサンブルに参加したらいいと思うよ」


「え?」


「日野ちゃんのアンサンブルは加地くんの音色があったほうがいいと思うもん」


「僕の音なんて・・・」


「ずっと、学院で音楽聴いてきた私が言うんだもん。間違いないと思うよ?」


「・・・・・・」


「なぁーんてね。無理に誘ったらダメだよね」




そもそも、日野ちゃんのアンサンブルなんだし。

私が口出す権利なんてない。




「本当に僕は君に背中を押してもらってばかりいるね」


「え?」


「明日、頼んでみるよ。日野さんにアンサンブルに入れてもらえないかって」


「うん。加地くんの音色、色んな人と合わさるといいね」




誰かが言ってた。

ヴィオラの音色はヴァイオリンの音色を支える、包み込む強さがあるって。

きっと、加地くんにぴったりだね。




「・・・ありがとう」


「あはっ私に御礼言うことないと思うんだけどなぁ」


「君には何度感謝しても足りないくらいだよ」


「・・・違うよ、加地くん」


「え?」


「私が音楽が好き。だから、自分の好きな音楽が増えて欲しいだけ」




加地くんのヴィオラと日野ちゃんのヴァイオリン。

アンサンブルメンバーと加地くんのヴィオラが重なったらきっと素敵な音色が生まれる。

私はそれが聴きたいだけ。




「それでも、君が僕の背中を押してくれたことには変わりないよ」


「・・・そっか。んじゃーとりあえず、加地くんのヴィオラもう一回」


「え?」


「さっきの曲、もう一回聴かせて。ジャンニ・スキッキ〜私のお父さん」


「喜んで」


「でもこの曲って怖いよねー。指輪買いに行かせてくれないなら川に飛び込みますって曲でしょ?」


「うん、情熱的な恋だよね」


「情熱的だけど無謀。でも、その無謀な情熱がちょっと羨ましいね」










† 懐かしい音楽にあの時を思い出した †

(君のこの曲のように情熱的な想いを伝えたら答えてくれる・・・かな?)



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