† 愛しているから、傷つけるんだ †
「、ちょっとおいで」
「へ?」
「早く来い」
「うわっ脅しだ」
しかも、背筋が凍るほどの笑顔だし!
あーでも、親衛隊の皆様からしたらこれがプリンス柚木の微笑なんだろうなぁー。
教祖柚木様の微笑。
「はい、どうぞ」
「何コレ」
「マドレーヌだよ」
「いや、それは見たらわかるんですけど」
うん、確かにマドレーヌ。
あの王道な感じのシェル型の。
「調理実習だったからね」
「あーなるほど、なるほど?!えぇ?!柚木先輩の手作り?!」
「当たり前だろ」
「うわぁー」
柚木先輩の親衛隊に売っていいかな?
一つ一万くらいで。
・・・お嬢様が多いから普通に売れそう。
あーでも、争奪戦が勃発するなぁー怖いなぁー。
・・・巻き込まれたら最悪だし。
「お前、今ろくでもないこと考えてるだろ」
「いや、売れるかなぁーって」
「そんなことしないよな?」
「ちょっと本気だったんですけどやめときます」
柚木先輩の笑顔が怖いし!
てか、よくよく考えたら柚木先輩からマドレーヌもらってる時点で親衛隊からの制裁が怖い怖い。
まず、柚木先輩に失礼だしね!
「食べないの?」
「今ですか?」
「そう。それとも・・・食べさせて欲しい?」
「それは全力で拒否っていいですかねぇ?」
「ダメ」
「うわぁー横暴」
「横暴とはひどいなぁー・・・さん?」
「柚木先輩のほうがひどいと思われますー」
「そうか?」
「学院内ではカナリの確立で私のほうが不利なんですから」
「まぁ、そうだろうな。俺が三年間で築き上げてきたものをなめるなよ」
「なめてませんって。とりあえず、食べさせてもらうのは却下の方向でよろしくです」
「何?もしかしてお前、本気にしてたの?」
「うわぁーこの人ヒドイー。ムカつくー」
「・・・本当に可愛いな、お前」
「それはどーもありがとうございますー。てか、このラッピングも柚木先輩がしたんですかー?」
「あぁ、火原がラッピング用品を分けてくれてね」
「は?」
「さんにあげるんだって張り切ってたよ、火原」
「あー成程、納得」
「火原に感化されてね、俺もお前にあげようかと思ったんだよ」
「成程成程ー。それで火原先輩が分けてくれたんだ」
「まぁね」
「そっかそっかーなんか火原先輩がにマドレーヌあげてるところが想像できます」
うん、ホント想像が出来る。
わかりやすいもんなぁー火原先輩って。
それが火原先輩のいいところなんだろうけど。
「・・・あぁ、そうだ。校内新聞見たよ」
「えぇーあれ、見たんですか」
「火原が見せてくれてね」
「あー成程。確かに柚木先輩が校内新聞自分で受け取ってるイメージはないや」
「ねぇ、」
「はい?」
「誰の許可を得てこんなことをされてるのかな?」
「は?」
「お前は俺のおもちゃのはずだよ?」
「柚木せんぱーい。ごめんなさい、話が全然ついていけてません」
てか、そもそも・・・私、柚木先輩のおもちゃになった覚えないんだけど・・・!!
そりゃ、コンクール始まった当初くらいに「お前は今日から俺のおもちゃ」なんてフレーズ言われた覚えはあるけど!
でも、私は柚木先輩のおもちゃになることオッケェーしてないし!
「てか、私は柚木先輩のおもちゃになった覚えがありませーん」
「お前は俺のおもちゃなんだよ、ずっとね」
「ねぇ、柚木先輩」
「何だ?」
「ずっとって重くないですか?」
「・・・・・・あぁ、重いだろうね」
「重いってわかってて柚木先輩はずっとって言うの?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・少し頭を冷やしてくるよ」
「柚木せんぱ」
「・・・今は何も言うな」
「・・・わかりました」
「悪かったな」
「んーん・・・マドレーヌありがと」
「・・・どういたしまして」
◇◇◇
つまらない嫉妬。
・・・まさか、俺が、ね。
「ずっと傍にいて欲しい、なんてな」
言えるはずがない。
いや、いっそのこと全てを晒してしまうほうが楽なのかもしれない。
この気持ちも、想いも全て・・・フルートの音色に乗せて。
† 愛しているから、傷つけるんだ †
(あぁ・・・本当にこの感情は厄介なものだよ。恋という感情は、ね)
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