†　少年は今日も夢を追い求める　†










｢さん｣


｢んー？｣


｢お願いがあるんだけど、聞いてくれるかな？｣


｢なにー？｣


｢さんに名前で呼んでもらいたいな｣


｢え？｣


｢さん、僕の名前覚えてる？フルネームで｣


｢加地葵クン｣


｢うん、正解｣


｢私だって物覚えは悪いほうだけどちゃんと覚えてるんだからー｣


｢うん、ありがとう。さんが僕の名前覚えてくれててすごく嬉しいよ｣


｢加地くんー。なんで名前なの？｣


｢・・・我侭だってことはわかっているんだけどね・・・ちょっと羨ましくて｣


｢え？｣


｢土浦とか月森とか志水くんのことは名前で呼んでるでしょ？｣


｢うん。そーいえばそーだね｣


｢だから、僕も名前で呼んでもらいたいなぁーって｣


｢んー？葵クン？ってなんか、恥ずかしい！！｣




普通に名前呼んでるだけなのに！




｢さん？｣


｢ごめん、加地くん。なんか練習は必要そうー・・・葵クン、葵クン｣




あぁーなんか恥ずかしいよ！！

恥ずかしいね！

そういえば・・・私って誰かの名前をクン付けで呼んだことない！！！




｢加地くんー。私、名前にクン付けはかなり練習が必要だと思われますー｣


｢え？｣


｢今までそんなことしたことない｣


｢そうなの？｣


｢うん。だって・・・梁ちゃんは梁ちゃんだし。蓮は蓮、桂ちゃんは桂ちゃん｣


｢・・・そっか、じゃあ尚更、ゆっくりでいいから名前で呼んでくれると嬉しいな｣


｢ホントにゆっくりだよ｣


｢うん、いいよ｣


｢・・・わかった。ホントにゆっくりだからねー｣




葵クン、葵クン・・・葵クン。

あぁーやっぱり恥ずかしいよ、恥ずかしい！！！




｢ー｣


｢あ、菜美ちゃん｣


｢おっ加地くんと一緒だったんだ｣


｢うん｣


｢じゃあとりあえず一枚撮っていい？｣


｢うん、もちろん｣


｢私もいーよー｣


｢サンキュー。って柚木サン以外なら拒否んないよねー写真｣


｢ほらー。柚木サンは外野が色々怖いし、怖いし｣




親衛隊とか親衛隊とか親衛隊が！！

ちょーっと話してるだけで睨まれるし！

ほとんど柚木サンから声かけてくるのに柚木サンに迷惑かけてーとかいっぱい言ってくるし！




｢あ、天羽さん｣


｢んー？｣


｢今撮ってくれた写真、5枚くらい焼き回ししてね｣


｢ははっ相変わらずだねー加地くん。了解｣


｢ありがとう！｣


｢加地くーん。5枚も写真どーするのー？｣


｢うん、もちろん観賞用と保存用だよ｣










†　少年は今日も夢を追い求める　†

(名前をクン付けで呼ぶのってなかなか難しいことだったんだね！恥ずかしくて仕方がない！)

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