† 小さい、けれど大きな理由 †
「土浦くん」
「・・・なんですか?理事長」
「その・・・彼女のことなのだが」
「彼女?」
理事長が彼女と呼ぶ存在に心当たりは二人。
しかも、俺に話しかけてくるとなれば・・・可能性が高いほうは自然に決まる。
「・・・あぁ、のことですか?」
「あぁ、そうだ」
「がどうかしましたか?」
「あの指は、」
「それに関しては俺はノーコメントです」
「いや、それはわかっている」
「・・・・・・?」
「君はあの子の行動の意味に気づいているのだろうか?」
「・・・えぇ、気づいていますよ。毎日何かしら言うようにしてますし」
「・・・そうか」
「理事長は知っているんですね。アイツがただ、気づいて欲しいだけだと」
「・・・あぁ。割と頻繁に増えているのか?」
「気づいてやる限りは数は増えたとしても悪化はしませんよ」
「そうか」
「・・・本当に、のことが心配なんですね」
「君と同じだと思うが?」
「・・・えぇ、そうかもしれませんね」
「しかし・・・土浦くん、一つ愚痴をこぼしても構わないかね」
「え、あ・・・はい。どうぞ」
理事長の口からいったいどんな愚痴が出てくるのか・・・
「なぜ・・・彼女の周りには男が多いのだろうか」
・・・そんなこと、俺に愚痴られても困る。
「土浦くんはこのことについてどう考える?」
しかも、さらに話を振ってきた・・・
「まぁ・・・アイツのあの性格ですから」
「・・・確かにそうだな」
「とりあえず、今は壁が険しくなってるんで」
理事長が入った時点でかなり険しくなったよな・・・
ただでさえ、柚木先輩とか月森あたりが険しくする要因だったのに。
最近、がコンクール関係者プラス加地以外と喋ってるのみてねぇーし。
まぁ、って実は男が苦手だったりするからいいんだけどな。
「あの子は相変わらず男が苦手なのか?」
「え、あー多分そうですね。コンクール関係プラス加地としか喋ってませんから」
まぁ、話しかけられたりしたら話してるけど。
絶対によほどのことがない限り自分から声かけるようなことはないし。
「そうか。ならば、私はこれで失礼する」
そう言って、理事長は俺に背を向けて歩き出した。
とりあえず、が言ってた話はマジみたいだな。
理事長が昔、の遊び相手だったっていう話は。
◇◇◇
「あ、吉羅サーン!!」
「・・・くん、どうかしたのか?」
「吉羅サンって桐也と従兄弟ってマジ?」
「あぁ・・・君こそ、桐也と知り合いだったのか?」
「中学時代によくゲーセンで遊んでたー」
「・・・なるほどな」
† 小さい、けれど大きな理由 †
(てか、まさかあの理事長が俺にのことで話しかけてくるとはな。しかも、愚痴。)
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