† 鎖で縛れるのは身体のみ、心までは捕らえられない †
「柚木サーン」
「・・・か。どうした?」
「別にー呼んだだけ」
「そう」
「・・・なんか柚木サン最近変だよー」
「そんなことないと思うけど?」
「そんなこと無い事ないよー絶対なんか変」
変なところで勘が鋭いよな・・・コイツ。
確かに変といわれれば変なのかもしれない。
「・・・お前の所為だよ」
「は?私の所為?」
「そう、お前の所為。お前が悪い」
「なんか意味わかんない」
「・・・だろうな」
「でも・・・私、柚木サンが元気ないのはちょっとヤダ」
「・・・・・・悪かった」
「え?」
「お前、何かあるとひとり沈むから先に謝っておいてやるよ」
「何それー」
・・・もう、仕方ないか。
出来れば遠ざけてしまいたい。
だけど・・・俺自身がそれを許さない。
全く・・・とんだ茶番劇を一人してるな。
「」
「んー?」
「ちょっと来い」
「なになにー?うわっ」
思いっきり引き寄せれば腕の中に収まる。
近いけど遠い存在。
「暴れるなよ。俺が満足したら離してやるから」
「よくわかんないけどわかったー」
俺はきっと・・・お前のことが好きだよ。
それこそ、鎖に繋いでしまいたいくらい。
「なぁ」
「ん?」
「お前って結構、お子様だよな」
「そんなことないと思うけどー」
「・・・でも、お前にはまだそのままでいて欲しいよ」
勝手な願い。
ただ、俺以外を特別な存在として選ばれることが辛いだけ。
だから、今はまだそのままで。
誰かを特別に愛さないで欲しい・・・なんてな。
本当に、俺らしくもないな。
「あ、柚木サン笑った」
「俺はいつでも笑ってると思うけど?」
「んーん。柚木サン笑ってるように見えて笑ってないもん」
「お前さ・・・変に鋭いよな」
「今の誉め言葉?」
「あぁ、誉め言葉だよ」
「そっかそっか。てか、柚木サンってそんな無理して笑わなきゃいいのに」
「その言葉そっくりそのままお前に返すよ」
「えぇー?」
「あんまり無理するなよ」
「私は別に無理なんてしてないもーん」
「うそつき」
「柚木サンと私って多分、ものすごっく似てるんだと思う」
「・・・あぁ、そうだね」
「だからね、ちょっと柚木サンのことわかったりするのかも」
確かに、俺とお前は似てるかもしれないね。
弱い部分まで、本当によく・・・
† 鎖で縛れるのは身体のみ、心までは捕らえられない †
(だけど、似ているから、ただそれだけでお前に惹かれているわけじゃない。)
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