† 抑えきれない気持ちが暴走して全てを傷つけていく †
「わからないっ」
「さん?」
「わからない、わかんないよ・・・っっ」
「さん、落ち着いて」
「いや、やだ・・・っ触らないで・・・!」
さんを落ち着かせるために背中に触れようとすれば、その手を振り払われる。
拒絶。
少し、自分の胸が締め付けられる感覚がした。
「・・・さん・・・」
「わかんない、わかんない、わかんない・・・っ!!」
「さん」
「どれが本当の私なの?!わかんない・・・!!」
でも、いくら手を振り払われても・・・
僕は彼女のことを落ち着かせてあげたくて。
拒絶されることは正直、すごく辛いけど・・・
それでも、自分が行動を起こすことによって、さんが落ち着いてくれるなら、
何度でも、この手を振り払ってくれても構わない。
「さん、落ち着いて。ゆっくり深呼吸して・・・」
「やだ、やだっやだやだっ触んないでっ」
「・・・・・・」
「いや、やだ・・・やだよぉ・・・っ」
拒絶の言葉はまるで・・・
助けて。
・・・と叫んでいるよう。
拒絶しながら、本当は・・・助けて欲しいと願っているよう。
・・・・・・僕はさんを助けてあげれるのかな。
それは、わからない。
でも・・・
「さん、大丈夫だから。僕が傍にいるから」
「・・・・・・ッ?!」
僕の中で何かが切れて・・・
気がついたら、さんのことを抱きしめていた。
力強く。
さんが潰れてしまうくらい、強く抱きしめていた。
本当に、無意識に。
でも、そんな僕の行動に驚いたのか、さんは落ち着いていた。
「僕のこと、わかる?」
「・・・加地、くん・・・」
「うん、よかった。僕のことわかってくれたね」
「・・・・・・加地くんは加地くん・・・」
「うん。僕が僕であるように、さんはさんだよ」
「私は私・・・」
「そうだよ、大丈夫。僕はさんの傍にいるから」
「加地くん・・・っ加地くん・・・っ」
さんは僕の名前を呼びながら、線が切れたように泣き出した。
僕は、さんの背中を擦ってあげることしか出来なかった。
「助けて・・・私を助けて・・・ッ助けてよぉ・・・」
「うん、今はゆっくり、いっぱい泣いて」
涙が枯れるくらいに。
僕は、受け止めるから。
さんがまた僕の大好きな笑顔を向けてくれる、そのためならなんだってするから。
◇◇◇
「さん、話せることがあれば話してみて?」
「・・・・・・」
「もちろん、無理に聞くつもりはないし、話したくなかったら話さなくてもいいからね」
「よく、わかんないの」
「・・・うん」
「加地くんが言ってくれたように私はね、私なのに・・・私じゃないみたいなの」
「・・・・・・」
「加地くんから見て、私はどんな子なのかな・・・?」
「さんは・・・僕から見てすごく強い女の子だと思うよ」
本当に、すごく強い子だと思う。
何が?って聞かれると少し難しいけど・・・
「・・・・・・」
「でも、その反面・・・すごく弱い女の子」
「・・・・・・」
「さんって完璧に見えるけど、それは違うんだってことはわかるよ」
いつも、綺麗に笑ってて・・・
誰とでも仲がよくて・・・
一年生でもさんに憧れてる人ってたくさんいるって冬海さんが言ってたし。
「違う・・・?」
「周りからの期待とかの重圧に負けてしまわないように必死で頑張ってる・・・僕にはそんな風に見える」
いつも笑っているのも、周りがそう思っているから。
もちろん、本当に笑っていることだってたくさんあるだろうけど・・・
僕が最初に見た綺麗な笑顔、アレが代表例。
殆どの人は騙されるであろう、作り笑顔。
「・・・私はね、何処までが本当の自分からわかんないの」
「僕が言ってしまうのは駄目かもしれないけど・・・僕は今、僕と話しているさんは本当のさんだって思ってるよ」
「本当の、私・・・」
「うん。でもね、本当は・・・さんに偽物も本物もないんだと思うよ」
「え?」
「全部が本当のさん」
日野さんたちの前で本当に楽しそうに笑ってるのもさんだし。
僕に初めて笑いかけたときの作り笑顔をしていたのもさんだし。
今、こうして僕と話しているのもさんだよ。
「・・・私にはまだよくわかんない・・・」
「じゃあ、僕が僕であるように、さんはさんだってことだけ、今は覚えておいて」
「・・・・・・うん」
「大丈夫だよ、さん」
「え?」
「どんなさんでも、僕は・・・さんのことが好きだよ」
強いさんも。
弱いさんも。
強がりで意地っ張りなさんも・・・
全部、大好きだよ。
「だから、よくわかんなくなったら僕のところに来て?」
「え?」
「ちゃんと僕がさんはさんだって証明してあげるから」
「・・・ありがと、加地くん」
† 抑えきれない気持ちが暴走して全てを傷つけていく †
(君は君だよ。どんな君でも、僕が大好きな君だよ。)
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