† 君の手は、とても暖かいね †
「吉羅サンー」
「・・・なんだね、くん」
「寝させて」
「・・・・・・」
「寝不足なの」
。
彼女は正直よくわからない。
暇なのか、よく理事長室に現れる。
もっとも、私は暇ではないのだがね・・・
「保健室に行きたまえ」
「やだ、保健室好きじゃないー」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・勝手にすればいい」
「やった」
勝ったと言わんばかりの表情を浮べながら、ソファーに横たわる。
「授業はいいのかね?」
「だいじょーぶ、紘センセの授業だし」
・・・金澤さんもなめられたものだ。
「5時間目終わったら教えてくださいー」
「6時間目は出るのかい?」
「ん、そろそろやばいから」
「・・・・・・」
「よろしくー」
◇◇◇
「くん、起きなさい」
「んー」
「後五分で5時間目が終了だ」
「んー後五分ー・・・」
「次は出ないと危ないと言っていたように認識しているが?」
「あ、そうだ。吉羅サン、ありがと」
◇◇◇
「はい、あげる」
「・・・これは?」
「多分マドレーヌ。家庭科の調理実習の」
「・・・・・・」
「味は食べれないこともないっていう感じで」
「くん」
「何ー?」
「これを私にどうしろと」
「食べて、今すぐに。ちなみに家庭科は3時間目と4時間目だったからまだ賞味期限には問題ないはずー」
「・・・仕方ない、頂くとしよう」
あ、吉羅サンが食べた!!!
うわぁーホントに食べたー。
吉羅サンがマドレーヌ食べるイメージなかったからなんか不思議ー。
菜美ちゃん連れてきて写真撮ってもらえばよかったー。
「どうですかー?」
「・・・食べられないことはない・・・」
「あ、それはよかったですー。吉羅サン目線こっちー」
カシャッ。
「くん。何をしているんだ、君は」
「え、菜美ちゃんがいないから自分で写メ撮ろうかと思いましてー・・・」
携帯持ってるし!
ちゃんとカメラ機能付だし!!
しっかり、吉羅サン撮れたし!
あとで香穂ちゃんに見せよーっと!!
「あぁ!!吉羅サン!携帯!」
吉羅サンに携帯とられた!!
しかも、なんか操作されてるし!!
吉羅サン身長高いから携帯とろうとしてもとれない・・・!!!
「あぁー私の力作がぁ・・・」
見事に消されちゃったー・・・
折角、吉羅サンの滅多にないシチュエーションだったはずなのにー・・・
「くん、悪戯は感心しない」
「はーい。ごめんなさーい」
「・・・君は変わってないな」
「え?」
「・・・もうすぐ予鈴だ。教室に戻りなさい」
「はーい」
† 君の手は、とても暖かいね †
(あーあ、折角のシチュエーションだったのに、吉羅サンってばひどいー!!)
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