† 沢山の何かを望むよりも、大切なひとつが手に入らなくて †













「あー柚木サンー」


「さっきクッキーもらったんだけど・・・食べる?」


「食べていーの?」


「あぁ・・・どうせ俺一人じゃ食べきれない」


「わーい、食べるー」


「既製品だけにしておけよ」


「なんでー?」


「危ないから」


「危ないー?」


「あぁ、何が入ってるかわからないからな」


「ふーん・・・恨み辛みー?」


「まさか」




おー即答。

さすが柚木サン。




「とりあえず、食べても大丈夫そうな既製品っぽいのちょーだい」


「そうだな・・・まず、これ」


「んーうわぁー高そうー」


「高いだろうな」


「いただきまーす」




心の中でこのクッキーを柚木サンにあげた人にごめんなさい。

と、いただきます。




「あ、普通に美味しい」




さすが高級。

最も高級なものだけが美味しいわけじゃない。

梁ちゃんのクッキーとか紘センセのクッキーとか美味しいし。




「ふーん・・・」


「あ、とられた」




食べかけだったのにー・・・

てか、まだいっぱい新しいの残ってるのにー。

わざわざ私が食べてるのとる必要なくない?




「まぁ・・・食べれないこともないな」


「むぅー」


「ほら、次の食べろよ」


「食べる食べるー」




チョコチップクッキー好きー。

甘いけど美味しい。

でも、これ大きいから一枚もいらない・・・かも。




「柚木サンー半分あげる」




半分こすればいいんじゃん!

私、頭いいー。

色んなの食べれるし、女の子たちにいちいちごめんなさいしなくてもいいし。




「はぁ・・・」


「なんで溜息ー?」


「別に」


「んー?」


「ほら、次の食べるんだろ?」


「食べるー」


「・・・その前に」


「ん?」


「俺が気づかないと思ってたのか?」


「何がー?」


「左手」


「んー?」


「さっきから、隠したままだよな?」


「あー気のせいですよー」




あえて言ってみる。

どうせ柚木サンには通用しないし。

だからこそ、ちょっとくらい抵抗もしてみたいんです。




「・・・もうクッキーあげないよ?」


「えー」




柚木サンは意地悪。

そんな白柚木様の微笑で言わないでくださいよー。

卒倒するじゃん。

私がじゃなくて、周りが。

そして、私が悪い子だって親衛隊の皆さんに怒られる!

それは嫌だ。

なんて、ひどいとばっちり!




「左手」


「ん」


「はぁ・・・また見事にやったな」


「えへー・・・痛っ」




頭コツンってされた・・・!!

しかも、地味に痛い。




「今回はどうした?」


「別にー何となく?」


「・・・明らかに悪化してるだろ」


「そーですかー?」


「このところ毎日だぜ?」


「あー・・・ん、確かに」




同じところばっかりだけど。

最近は親指オンリー。

皮膚が再生したと思えばその再生を邪魔する。




「やりすぎると痕が残るよ?」


「んー」


「ちゃんと聞けよ」


「聞いてるもん」


「・・・はぁ」


「柚木サン」


「・・・なんだ?」


「クッキー、続き」


「はぁ・・・その前に、指貸せ。絆創膏張り替えてやるから」


「んー」










† 沢山の何かを望むよりも、大切なひとつが手に入らなくて †

(ねぇ、柚木サン。その柚木サンのキラキラ笑顔も本物なんだって私は思うよ?)



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