† 今だけはその優しさに 甘えさせて下さい †
「れーん」
「・・・か、どうかしたか?」
「呼んだだけー」
「・・・そうか」
蓮の目線の先は私の指。
で、安堵したような表情。
「増えてないですよー」
「・・・そのようだな」
「加地くんから聞いたよー。蓮もばんそーこ持ってるんだねー」
「・・・・・・」
自惚れかも知れないけど、きっと私のためだと思う。
一回、蓮の前でやっちゃったし。
今回の加地くんと同じパターン。
そのときの、蓮の顔今でも覚えてる。
驚きとか、色んな気持ちが混じったそんな顔。
「」
「なにー?」
「マドレーヌ、食べるか?」
「え?」
「さっきの授業で作ったものだが・・・」
「蓮の手作り?!食べる!食べる!」
そっかー音楽科でもあるんだねー、調理実習。
てか、さすが蓮。
器用サンー。
お裁縫は苦手みたいだけど、このマドレーヌは超美味しそう。
「んーっおいしー!」
「・・・そうか・・・よかった」
「これ、すごく美味しい!香穂ちゃんに半分あげていい?」
「あぁ、構わない」
「ありがとー」
美味しいものは半分こ。
なんとなく、もっと美味しくなる気がするし!!
美味しいものは香穂ちゃんにも食べさせたい!!
それに、蓮の手作りなんて超貴重だし!!
「ー!!」
「うわぁーっ菜美ちゃんー」
「あ、ちょっと!逃げないの!」
「ヤダー菜美ちゃん写真撮るもんー。私、写真写り悪いこと知ってるくせにー」
「いや、はいつでも可愛いって!!」
「お世辞にはのらないー」
「もうー!お世辞じゃないって!何度も言ってるでしょー!」
「ぬぅー」
「とりあえずさ、一枚撮らせてよ。月森くんと一緒にさ」
「・・・・・・」
「蓮と一緒に写真・・・」
どうしよう。
ちょっと(いや、カナリ)撮りたい。
欲しい!
だって、蓮ってばいつも写真の輪の中には入ってないし。
コンクールの集合写真は撮ってたけど。
でも、あんまりないんだもん!
「・・・菜美ちゃーん。現像したら一番に見せてくれる?」
「もちろん!」
「じゃー撮るー蓮と一緒ー」
「・・・いいのか?」
「ん、蓮と一緒ならいいー」
「じゃーお二人さん、並んでー」
菜美ちゃんの写真の腕はホンモノなんだよねー。
いっつも綺麗な写真撮ってくれるし。
この前、香穂ちゃんと笙子ちゃんと一緒に撮った写真一番のお気に入り!
でも、ちょっと寂しいんだよねー菜美ちゃんと写ってる写真がないってこと。
◇◇◇
「あ、そーいえば、校内新聞見たよー」
写真を撮り終わって、蓮は練習室に行くって言っていなくなって・・・
菜美ちゃんがまだ時間あるみたいだからお喋り。
「あー今日発行のやつ?」
「ん、加地くんの」
「あれ、発行して即なくなったんだよ。よく手に入れたね」
「加地くんが持ってた」
「あ、そういえば、昨日渡したなぁー」
「うん、そう言ってた。でも人気だねー」
「まぁ・・・やっぱり噂の転入生だからねー」
「女の子たちがキャーキャー言ってた」
高額で売られてたし、校内新聞!
私は加地くんが見せてくれたから見れたけど!
「ははっまぁーあのルックスだしねー」
「うんうん、美形ー」
「で、的にはどうよ?」
「何がー?」
「加地くんだよ、加地くん!」
「あー・・・加地くん、いい人だよ」
「ま、また微妙な答えを・・・」
「だって、いい人だったんだもん」
うん、加地くんはいい人。
加地くんのおかげで・・・火原先輩とちゃんと話せるようになったし。
私のこの傷見ても、拒絶なんてしなかった。
あの時からもずっと私に笑いかけてくれるし、話しかけてくれる。
宿題も教えてくれるし、優しい。
† 今だけはその優しさに 甘えさせて下さい †
(加地くんはすっごく優しくていい人。)
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