† 傷つくと、知っていたのに †
「香穂ちゃんごめーん。梁ちゃんと喋ってたら・・・あ、」
屋上には火原先輩と香穂ちゃん。
あ、火原先輩困った顔してる・・・香穂ちゃんも。
そんな顔させてるのは私の存在。
二人にそんな顔させたくないのになぁ・・・
「香穂ちゃん。ココア、はい」
「あ、ありがと」
よし、とりあえず香穂ちゃんにココアは渡した。
だってこのココアは加地くんからのだしね。
・・・・・・じゃあ、私はこの場から消えることにします。
香穂ちゃんを悲しませることになっちゃうけど、
心配させちゃうだろうけど、
うん、ごめんなさい。
あとでちゃんと謝るから今は許してください。
「あっ!」
「加地くん加地くん。カフェテリアでこれ飲もう?」
「え、あ・・・うん」
「じゃあ、バイバーイ。また明日ねー」
加地くんを道連れに。
あ、加地くん香穂ちゃんと練習だった・・・
うん、加地くんにもあとで謝ろう。
◇◇◇
「・・・さん?」
「あ、加地くんごめんねー。香穂ちゃんと練習だったのに道連れにしちゃって」
「え、あ、それはいいんだけどね」
「ありがと」
「・・・さんは火原さんのことが嫌いなの?」
「えーどうして?」
「だって、今の・・・」
「あーそっか。そんな風に見えちゃうよね。でも、火原先輩のこと嫌いじゃないんだよ」
「・・・・・・」
「でもね、どう接していいのかわかんない」
「え?」
「火原先輩と香穂ちゃんが付き合いだしたのが夏休み中で、あんまり二人でいるところ見てなかったせいかな」
前までは、香穂ちゃんと火原先輩と三人で帰ったり・・・
ご飯食べたりもしてたけど、
二人が付き合うってことになって、
よくよく考えてみたら私って邪魔だったんじゃないかなぁーって想うようになった。
そしたら、香穂ちゃんとは普通に話せるけど、火原先輩とは話せなくなった。
で、今みたいな状態。
「あ、ごめんね。加地くん」
「さん。僕じゃ話し相手にはなれないかな?」
「え?」
「何もできないだろうけど、話を聞くことはできるよ」
「・・・いいの?」
「うん」
「ありがと。最初ね、二人が付き合うことになったって教えてくれたときは普通に話せてたんだけど」
火原先輩に、
香穂ちゃん泣かせたら許さないですよーって普通に笑って言えてたのに。
火原先輩も笑って、
そんなこと絶対にしないよ!って言ってまた笑って・・・
「でもね、夏休みが終わって、二人が一緒にいるの見て私って邪魔なのかなぁーって想うようになっちゃった」
そしたら、自然に声をかけられなくなって・・・
気づいたら今みたいな状態。
火原先輩と香穂ちゃんが一緒にいるの見たら逃げてしまう私がいる。
「寂しかったんだね」
「え?」
「さんは日野さんのことも火原さんのことも好きなんだよね?」
「・・・うん」
「だから、寂しくなっちゃったんだよね」
「寂しく・・・うん、そうかも」
「その気持ち、ちゃんと火原さんにも日野さんにも伝えてあげたほうがいいと思うよ」
「火原先輩にも?」
「うん。きっとあの人は誤解してると思うから」
「誤解?」
「きっとね、さんに嫌われてるって思ってるよ」
「・・・私、嫌いじゃないのに・・・」
「うん。だからね、ちゃんと話をしよう?火原さんと」
「・・・・・・」
「さんもこのままじゃダメだって思ってるんだよね?」
「・・・・・・うん」
二人に困った顔させるの嫌だし。
できれば・・・また、三人でご飯食べたりしたいな・・・
「じゃあ、話をしてみよう?」
「うん。加地くん・・・ありが」
「待って」
「え?」
「その言葉はちゃんと火原さんと話ができてから言って欲しいな」
「・・・うん」
「じゃあ、帰ろうか?そろそろ6時だよ」
「ん、帰る。ごめんね、練習」
「気にしないで?練習は家でちゃんとするしね」
「・・・加地くんってヴィオラだよね」
「うん」
「今度聴かせてね」
「え?」
「私、加地くんのヴィオラ聴いてみたい」
「・・・ありがとう。じゃあ、今度、さんの都合がいいときに是非」
「普通この場合、加地くんの都合いいときだよー」
「そうかな?」
「そうだよー」
加地くんってなんか、優しいなぁ・・・
とっても、優しい空気と雰囲気。
私、普通に話せてるし・・・こんなにいっぱい話したの初めてなのに。
「あ、そうだ。土浦探しに行く?」
「え?」
「さっき言ってたでしょ?」
「あーそうだった。うん、梁ちゃん探す」
「じゃあ行こうか」
「ん」
加地くんに話を聞いてもらって・・・
私、今までずっと逃げてきたんだなぁーって思った。
早く火原先輩と話をしよう。
それで・・・
ちゃんと、加地くんにありがとうって言おう。
† 傷つくと、知っていたのに †
(・・・早く言えるといいなぁ・・・加地くんに、ありがとうって。)
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