† 彼は、幸せだったのかもしれない †
「・・・あーあ。やっぱりこうなっちゃうんだねぇー」
僕の胸にナイフが刺さる。
刺したのはもちろん、チャン。
チャンが僕を殺そうとしてることくらい知ってた。
だって、ずっと殺気がすごかったもん。
僕がチャンをこの鳥籠に閉じ込めてからずっと、ずっとね。
「でも、これでいいかな・・・」
一番好きだと思える人。
初めて、愛してると思った人。
どんなにこの手を血で染めても欲しいと思った人。
そんな人にこうして、殺される、なんて。
実はすごく幸せなことかもしれないね。
「白蘭」
「・・・・・・久しぶりにチャンの声聴いたなぁー」
チャンの声を聴いたのはこれで3回目。
初めて聴いたのはチャンに初めて逢った時。
どこかのファミリー主催のパーティーで少し言葉を交わした。
そして、2回目はチャンのファミリーを壊滅させた時。
「・・・・・・愛してるの、あなたを」
「え?」
「初めて逢った時から、ずっとあなたに恋をしてる」
「・・・そっかー・・・僕たちすれ違っちゃったんだね」
特に僕は。
チャンが欲しくて、チャンのファミリーを壊滅させた。
チャンの周りの人間をみんな殺した。
そんなことしなくても、君は僕を見ていてくれたのに。
「・・・・・・」
「僕も、チャンのこと愛してるよ。初めて逢った時、僕も君に恋をしたから」
「私、あなたのこと許せない」
「うん、ごめんね」
君の大切なファミリーを壊滅させちゃって。
君から全てを奪っちゃって。
ごめんね。
「でも、好きなの。愛してるの」
「・・・・・・ありがと、チャン」
「ねぇ、白蘭。私を殺して」
「うん、いーよ」
殺してあげる。
僕が。
愛しい君を。
「愛してるよ、チャン」
「私も、愛してる。白蘭をずっと、愛してる」
◇◇◇
「入江様」
「何?僕は忙しいんだけど」
「・・・白蘭様がお亡くなりになられました」
「なんの冗談・・・・・・」
「事実でございます」
「・・・どこで何があった」
「全ては鳥籠での出来事でございます」
「・・・鳥籠・・・」
「以上で報告を終わります」
「・・・・・・」
それが、あなたの幸せだったんですね。
白蘭サン。
† 彼は、幸せだったのかもしれない †
(どうか、鳥籠のカナリアと幸せになってください。)
Fin...
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