† 仄かに香る貴方の匂い †
「あれ?みんなはー?」
「どこかへ出かけたさ・・・」
「ふーん・・・」
どこか、ということは・・・どこに行ったかは知らないということだね、きっと。
知盛には誰がどこへ行こうが興味ないってことか。
「お前はどこへ行くつもりだ?」
「うーん・・・行くところないし」
ゆっくりしちゃおうかなぁ・・・
折角のおやすみだし。
「では、姫君の時間は俺が頂こうか・・・」
「え?知盛?」
「俺が相手では不服でしょうか?」
「いいよーあげちゃう、いっぱい楽しませてよね」
「姫君の御心のままに・・・」
◇◇◇
「うわぁー大草原!すごーい、どうしてこんなところ知ってるの?」
「この間・・・有川と鍛錬をするためにここに来た」
「そっかぁ・・・空気が美味しいね」
「・・・・・・」
「ん?どうしたのー?」
の髪を一房とってみれば香るのは見知った薫物の匂。
「クッ・・・香りがな・・・」
「香りー?」
「あぁ・・・重衡のものか?」
「あーうん、一応」
「一応?」
「この前福原に行ったでしょ、そのとき尼御前が渡してくれたの」
「母上がか・・・」
「そう、重衡が私のために用意してくれたものなんだって」
「我が弟ながら妬けることをしてくれる」
「え?」
「俺も桜月の君に香炉でも贈ってみましょうか」
「もらえるものはもらうけど・・・でも、私は知盛に舞扇もらっちゃったもん・・・これで十分だよ」
「・・・・・・」
「この舞扇にも香が焚き籠められているよね?」
「あぁ・・・お気づきでいらっしゃるとはな」
「気付くよー、知盛の薫物の香りだよね」
「お気に召さなかったのでしょうか?」
「ううん、その逆。すごくいい香りで・・・私、好きだよ」
「そうか・・・」
「ねぇ知盛・・・銀のことどう思う?」
「別に・・・どうも思わないさ」
「そっか・・・うん、知盛ならそう言う気もしてた」
「・・・・・・」
「でもね、銀には・・・重衡には呪詛が刻まれているの」
「何だと・・・?」
「きっとまだ、重衡も気付いてない」
「何故俺にそのことを話す?」
「うーん・・・何となく」
「俺は重衡の呪詛を祓うことも出来ないと思うが?」
「わかってるよーもしかしたら誰かに話して、楽になりたかったのかもしれないね」
全ての運命を知る女・・・
それ故に、苦しみも多いというわけか。
「出来れば誰にも言わないでね」
「クッ・・・言わないさ」
「ありがと」
† 仄かに香る貴方の匂い †
(・・・まぁ、俺はお前の従者だからな、話すのならなんでも聞いてやるさ・・・)
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