† その十字架が背負うのは、救いであり、罪であり、罰である †
「何だと?!」
源氏は・・・源義経は一ノ谷から鵯越じゃなかったのかよ。
「大輪田泊で帝たちと合流する。指示は伝わってるな?」
「はっ!忠度殿とともに大輪田泊に向かわれているようです」
「じゃあ大丈夫だな!」
忠度殿が一緒なら安心だ。
あとはこっちをどうにかするだけだ。
俺がここに残って源氏の奴らを食い止める・・・それしかないよな。
「経正、お前は今すぐ大輪田泊に向かってくれ」
「還内府殿はどうなさるおつもりですか?」
「俺はここに残る」
「・・・・・・」
「兵たちは任せたぜ、経正」
「御意」
還内府、平重盛の名がどれだけ通用するかはわからないが・・・
今はそれしかない。
そういや源氏にも戦を好まない奴がいるとか言ってたな・・・知盛が。
アイツを説得して三草山を両軍撤退にした奴がこっちに向かってるならいいんだけどな・・・
◇◇◇
「で、姫君。この人選の意味を教えていただきましょうか?」
「えぇーすごく単純だよ。還内府の正体を知ってそうな人を選んだだけー」
「還内府の正体ですか・・・」
「敦盛は知ってるもんね?」
平家の武将だし。
還内府としても将臣としても逢ってるし・・・
「あぁ・・・」
「俺も知ってるよ」
「やっぱり知ってるんだねーヒノエも」
「あぁ平家の将とどこかの姫君が院の傍にいた怨霊を浄化した・・・と聞いたからね」
「熊野の烏さんに?」
「ふふ、ご名答」
やっぱり熊野の烏さんはすごいねぇ・・・
でも、どこかの姫君って間違いなく私だよね?!
あの二人と敦盛と院の傍のあの怨霊さん浄化したの私だし。
っていうか、敦盛も一応平家の将って認識されてるのかな?
まぁどちらでも構わないのだけど。
「僕も大方想像はついていますよ」
「やっぱり弁慶もだよねー」
勘は鋭いし、情報もたくさん持っている。
弁慶も知っててもおかしくないだろうなぁなんて単純に思ってた。
「リズ先生も知ってますよね?」
「あぁ、問題ない」
沢山の運命を見てきたんだもんね、リズ先生は。
当然、将臣が還内府だとわかる運命も見ている・・・筈だと思ったんだよねー。
「もちろん、さんもご存知でしょう?」
「当然!知ってなかったらこんな質問しませーん」
「ふふ、それもそうですね」
「折角だし、みんなで言ってみちゃう?」
「それはご本人の前でがいいでしょう?」
「それもそうだねー」
「では、一ノ谷はどう攻略するつもりだ?」
「うーん・・・崖から降りるなんてことはしません」
「では崖を降らない道ということですね」
「そう!還内府は知ってるからねー鵯越の逆落としを」
最も、ここに源九郎義経はいないけど。
「決まりだな」
「・・・殿、本当にこれでいいのか?」
「うん、これでいいんだよ」
あっでもこのパターンだと一ノ谷は撤退した後だね、きっと。
将臣に逢う確率も低そう・・・
「とりあえずー還内府の顔でも見に行きましょう」
「余裕だね、」
「余裕?うん、余裕かな?戦う予定はないし」
「では、もし還内府殿が勝負を挑んで来たらどうするおつもりで?」
「まずは話し合いから始めるよ」
「還内府もきっと・・・お前には敵わないだろうね」
† その十字架が背負うのは、救いであり、罪であり、罰である †
(ま、行ってみて考えよ。どうなるとしても、私は前に進むから。)
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