† 決まった音しか出さないピアノ †
・・・〜♪
「あぁーやっぱ、わかんない」
コンコン。
「タイムリミットか。どうぞー」
「失礼しま・・・?」
「あ、つっちーだ」
「・・・お前が先客か?」
「あ、うん。練習室使いたい人が来るまでってことで借りてた」
「またなんで・・・」
「ほら、流されやすい性格してるから」
ピアノの前には楽譜。
「トゥーランドット〜誰も寝てはならぬ」
今回の日野のアンサンブルで演奏する楽曲の一つ。
「トゥーランドット〜誰も寝てはならぬ・・・か」
「そう、学院祭で日野ちゃんたちがやるって言ってた曲。この曲好きなんだぁー」
「ここ、ドレミ間違えてる」
「え、うわぁー・・・通りでなんか変だったわけだ。あ、椅子半分どーぞ」
「サンキュ。・・・本当にお前、音楽苦手だよな」
「いやぁーあはは、才能ないみたい」
「一年のときからよく、音楽の課題押し付けられてたような気がするぜ」
「あー押し付けてたなぁー。蓮は音楽の課題だけは厳しいから」
「確かに厳しそうだよな」
「うん、それこそ清清しいくらい厳しい。でも、つっちーは優しいよね」
「まぁ、俺の課題でもあったしな」
「ホント、つっちーと同じクラスでお得お得だったー。音楽に限らず」
「なんだかんだ言って俺もお前と一年のとき同じクラスでよかったと思ってるんだぜ」
のことが好きな男どもには色々嫌味も言われたけどな。
まぁ、それはコイツが悪いわけでもなんでもない。
それよりも、何よりも・・・純粋に、コイツとつるんでることが楽しかった。
「え、マジ?」
「あぁ」
「それはなんか嬉しいね。あ、つっちー弾いてよ、トゥーランドット」
「・・・仕方ないな、いいぜ」
「やったぁー・・・って、なんで抱き上げるかな」
「さすがに端だけじゃ無理だからな。退かせようかと思って」
「いや、言ってくれたら普通に私が退くから」
「それよりも、お前ちゃんと食べてるのか?」
「へ?」
「なんていうかさ・・・軽いし」
「食べてるよー必要最低限の量を朝昼晩3食きっちり。あー最近は加地くんがお菓子持ってきてくれるから4食?」
「あーそういえば加地がお前にお菓子を与えてる姿を最近よく見るな」
「さすがに毎日4食は太る原因になりそうなんだけどねぇー・・・新作ばっかり持ってきてくれるからついつい・・・」
「見事に餌付けされてるな」
「あ、やっぱりつっちーもそう思う?」
「あぁ」
「って!それより、今はトゥーランドット」
「はいはい。じゃあ聴いてろよ」
〜♪
「流石つっちー天才」
「そういえばお前、劇出るんだって?」
「あーうん。まさかのジュリエット」
「確か加地がロミオだったよな」
「そうそう。加地くんがロミオ、クラス全員一致でロミオ決定。時間合ったら見に来てね」
「あぁ」
「来週、衣装合わせあるんだー」
「・・・サイズあるのか?」
「うわっつっちーってば超絶失礼なこと言いやがった!」
「いや、ほら、なぁ?」
「はいはい、つっちーの言いたいことはわかりますよ!それこそ手に取るようにね!」
なんて言いながら睨みつけてくる姿が・・・
柄でもなく、「可愛い」と思っちまった。
・・・結構重症みたいだな。
多分、身近に加地というそれこそ重症な奴がいる所為だよな、絶対。
「でも、家庭科部の子たちが作ってくれるからそれこそサイズぴったりなので心配には及びませーん」
「じゃあ、楽しみにしてるぜ。お前のジュリエット」
「は?」
「衣装合わせするんだろ?」
「あ、うん」
「折角だし見せに来いよ」
「えぇー私にそんな恥ずかしいことさせるんですか」
「いいだろ、・・・見てみたいって思っちまったんだからさ。あ、でも見せに来るときは加地抜きで頼むな」
「え、なんで?」
「こっぱずかしい台詞をつらつら吐くのが想像できるから」
† 決まった音しか出さないピアノ †
(ははっ俺も重症だな。・・・まぁ、仕方ないか。)
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