* もの思ふに たち舞ふべくも あらぬ身の 袖うちふりし 心知りきや *
「おぉ、!来たか!」
「お久し振りです、清盛様」
「清盛様など堅苦しい呼び名など必要あるまい、いつも通り小父様でよいぞ」
「では、小父様・・・お招きありがとうございます」
「うむ!ゆるりとしていくがよい」
熊野に使いが来たと思えばそれは小父様が開く宴の招待状。
舞踊の宴、とのこと。
「案内を・・・」
「は、はい。様・・・こちらに・・・」
「案内など、必要ないさ・・・」
「あら?知盛」
「と、知盛様!」
「、俺のところに来い」
驚いた女房の姿と、何も気にせず私に手を伸ばす知盛。
その、知盛の手に触れれば優しいあたたかさを感じる。
相変わらずね。
誰かが言っていたね、知盛は冷酷で戦いしか見ていないと。
こんなにも手から伝わる想いはあたたかいのに・・・
「知盛、重衡はどこに?」
「・・・他の男の名を紡ぐとはつれない姫君だ」
「もう、そんな戯言を言って・・・」
「戯言のつもりはないのだが?」
「知盛って結構我侭なのよね」
良い様に言えば自分の意志を貫く人。
でも、悪いように言えば・・・我侭な人。
それでも・・・知盛の心はとても優しいもの。
「、いらっしゃったのですか」
「重衡」
「また・・・お前は邪魔をしてくれるな、重衡」
「申し訳ございません、兄上。可愛らしい姫君のお声が聞こえましたので・・・」
「クッ・・・この声に誘われてきた、か・・・」
「はい、いつ聴いてもの声は可愛らしいものですね」
「この声に誘われる奴が多くて敵わんな・・・」
「えぇ、本当に。・・・お手をどうぞ」
彼らはいつもそう。
私の視えるこの力を怖がることもしない。
怖がらずに、手に触れることを許してくれる。
手から伝わる、彼等のあたたかく優しい心・・・
「その役目、初めに担ったのは俺のはずだったのだが」
「ふふ、兄上。詰めが甘いですよ」
「ククッ・・・我が弟ながら恐ろしい」
「兄上に言われたくはないですよ、私がお逢いする前ににお逢いしたでしょう?」
「一番に逢ったのは父上だ」
「それでも、私よりも先にお逢いしたのは事実です」
「はいはい、そのあたりにしておきなさい」
「「・・・・・・」」
「そうそう、小父様にお聞きしたのだけど・・・今日は二人が舞を披露してくれるんだよね?」
「・・・父上、また勝手なことを・・・」
「え?違うの?」
「、あなたは我々の舞をご所望ですか?」
「うん、もちろん。私は二人が舞うと聞いたから観に来たのだもの」
小父様からの招待状の最後には、知盛と重衡が舞うとあった。
だから来たようなものだもの。
「どうしますか?兄上」
「・・・が望むのであれば致し方があるまい。そうであろう?重衡」
「えぇ、そうですね。が望むのであれば・・・」
「私はあなたたちの舞が好きよ」
「俺はお前の舞が好きなのだがな・・・」
「私もの舞が好きですよ」
「あら?そんな風に誉めてもらっても・・・私は舞わないわよ」
「「・・・・・・」」
「、一緒に舞いませんか?」
「え?」
「そうだな・・・お前が共に舞うのであれば、俺も本気になろう」
「知盛の本気の舞なんて滅多に観れないのよね・・・」
滅多と本気を見せないから。
舞でも、歌でも・・・本気でなくてもその腕は十分だから。
「重衡も、本気になるのかな?」
「私はいつでも本気のつもりなのですが・・・」
「そうかしら?あなたたち兄弟はよく似ているよ」
だからこそ、舞もすごく綺麗なのよね。
この二人が舞う、それだけでこの邸はいつもに増して華やかなものにになる。
「二人が本気になるのなら・・・私も一緒に舞うよ」
「クッ・・・これは本気にならないといけないようだな」
「えぇ、そのようですね」
もの思ふに たち舞ふべくも あらぬ身の 袖うちふりし 心知りきや
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蒼水秋姫様からのリクエストで・・・
熊野の巫女姫様設定で知盛と重衡とのお話です。
今回もあまり主人公さんの力が発揮されてません。(汗)
場面的には平家がまだ六波羅に居を構えていた頃かな?
まだ、将臣はこの世界に来ていません。
リクに適っているかちょっと心配だったりしますが・・・
蒼水秋姫さん、リクエストありがとうございました!
もの思ふに たち舞ふべくも あらぬ身の 袖うちふりし 心知りきや
もの思いでいっぱいの私の心は立って舞うこともできないほどの状態でございましたが
あなた様に向けて袖を振っておりました私の心をご存じでしたでしょうか?
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