* 夢の中ならもう一度やり直せたかもしれない *
「久保ちゃん!電話!!モグリ野郎からっ」
「あ、そう」
どうやら朝一の電話は鵠サンからだった模様。
さぁーって、とりあえずお風呂に入りたい。
うん、そうだ、そうしよう。
「沙織チャン、お風呂入る?」
「はぁ?」
「やっぱり朝風呂しなくちゃでしょ」
ここのお風呂別に小さくないし。
二人で入れないことないし。
「って言うわけで・・・稔クン覗いちゃダメだよー」
「誰が覗くか!!」
「さっ!沙織チャン行こう行こう」
「チャン、何処行くの?」
「あっ電話終わったんだ」
「ん、鵠サンのところ行くけど・・・チャンも行くでしょ?」
「行く、でもその前にお風呂行くの」
「沙織チャンと?」
「うん、覗いちゃダメだよ?」
「了解」
この子の頭の中は一体どんな感じに出来ているんだろうか。
見ず知らず、しかも昨日(正確には今日)逢った人間とお風呂に入るなんて・・・可笑しい。
ここは銭湯じゃあるまいし。
「はぁーやっぱり朝風呂はいいねぇー」
でも、私も十分可笑しいのかもしれない。
そのよくわからない子と一緒に湯船の中にいる。
「沙織チャン、よく眠れた?」
「・・・あ、うん、ベット・・・ありがと」
「どう致しまして」
「・・・本当に久保田さんと一緒に寝たの?」
「うん、正確には誠人クンと稔クンと一緒にだね」
途中で猫が紛れ込んで来た、なんて言いながら彼女は笑った。
猫は時任らしい。
「さぁーって、そろそろあがらなくちゃね?」
「あっうん」
「ありがと、ここでいいよ」
「いーの?」
「うん、もう決心ついたし。・・・色々頑張ってみる」
「そっか、頑張ってねー」
沙織チャンともバイバイってことになって・・・
「じゃ、俺たちこっちだから」
「あ、うん・・・ありがとね」
「走んなよ、転ぶから」
「バイバーイ」
きっと・・・もう逢うこともないんだろうなぁ・・・世界は広いし。
とりあえず、彼氏サンとうまく行けばいいね。
「そうだ、チャンも行く?」
「鵠サンのところ?」
「そ」
「行く行く。ってさっきも聞いたよね?」
「あー言ったかもね」
「まぁいっか、とりあえず鵠サンのトコ行こ」
夢の中ならもう一度やり直せたかもしれない
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