* 君はそうやって1人で泣くから。だから僕は君を放っておけないんだ。 *
「はぁ・・・また泣いてる」
さっきまで、ニコニコ笑ってて。
でも、みんなが潰れて、その後は・・・
ひとりで部屋で、泣く。
いつものこと。
だから、俺は潰れた振りをする。
の泣き顔を見るために。
「泣いて、ない・・・もん・・・・・・野宮さんの、気のせいだもん・・・っ」
「・・・はいはい、俺の気のせいでいいよ」
そう言わなきゃ、俺を睨みつけたままだろうし。
涙いっぱい溜めた目で言われても迫力はないけど。
「野宮さん、さっきまで潰れてた・・・」
「うん」
「なのに、回復するの、早い・・・いつも」
うん、ごめんね。
潰れた振りだから、当然回復も早いんだよ。
振りなんてしなければ、は泣かないのに・・・
俺はいつも潰れた振りをする。
で、の泣いた顔を見る。
「みんなと一緒に潰れればいいのに」
そうすれば、泣かずにすむのに。
泣かないで、また新しい朝を迎えることが出来るのに。
それなのに、君は、それを望まない。
「・・・・・・嫌」
うん、知ってる。
酔って潰れても・・・の求める優しい腕はない。
「もう遅いよ、寝なさい」
の頭をくしゃくしゃっと撫でて・・・
立ち上がろうとしたところで、の口が開く。
「・・・・・・野宮さん」
「何?」
「・・・ありがと・・・」
「どう致しまして」
ねぇ、。
君は気付いているのかな?
俺がいつも潰れた振りをしていること。
きっと、気付いていないんだろうなぁ・・・
自分のことで精一杯だろうから。
「あっ・・・野宮さん」
「ん?」
「紅茶、飲まない?」
「が淹れてくれるの?」
「うん、もちろん」
「じゃあ・・・頂こうかな」
「お任せ下さい!」
別にお茶が欲しいわけじゃないけど。
元気な振りをしているを見るのは痛々しいけど・・・
それでも、笑っている顔が見れるなら、と思ってしまう。
「甘いのがいい?苦いのがいい?」
「甘いの」
「はーい。じゃあちょっと待ってて下さいねー」
いつか、君が潰れるほど飲んで・・・
その時に求める手が、俺の手だといいな・・・
なんて言ったら、美和子さんたちに笑われるだろうなぁ。
君はそうやって1人で泣くから。だから僕は君を放っておけないんだ。
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