* 君を奪い尽くす、僕の全てを懸けて *
『あっ野宮さん、いらっしゃいー』
さんに呼ばれて病室に来てみれば・・・
いつもの光景。
『悪いな、野宮』
『いえ、別に』
『、自販機まで行ってきてくれる?』
『うん?いいよー』
『じゃあ、よろしく』
そう言って、さんはの頭を撫でる。
本当にいつも見る光景。
『行ってきまーす』
『・・・で、なんですか?俺に用って』
『野宮、のこと・・・頼むな』
『何言ってるんですか、さん』
『人一倍強がりな癖に寂しがり屋だから』
『って言うか、さんが一緒にいればいい話ですよね?』
『あー・・・それは無理』
『はぁ?』
『俺、もう長くないんだよ。今日までが限界』
『な、何言って・・・っていうか、はそれを・・・』
『知らないよ』
『・・・・・・なんで』
『言わないのかって?』
『・・・・・・』
『笑顔が見たいからかな』
『笑顔、ですか・・・』
『そう、俺はの笑った顔が好きだからなぁ・・・』
『・・・・・・』
『あーあと、仕事のことも頼む』
『仕事?』
『そう、いきなりこんな展開になっただろ?だから、全然仕事の方の整理してないんだよ』
『・・・・・・』
『中途半端で悪いな』
『・・・・・・いえ・・・』
『あ、そうだ。お前、のこと好きだろ?』
『な・・・』
『わかりやすすぎ』
『・・・・・・そんなこと言うのさんくらいですよ』
『ははっ・・・まぁ、野宮なら大丈夫だな』
『・・・・・・』
『のこと、よろしくな』
それだけ言って、さんの目は閉じられた。
『さん?!』
『・・・』
『野宮さん!さんは・・・さんは・・・どうして、ねぇ、目を開けてくれないの・・・?!どうして・・・!!』
『・・・・・・』
『さん・・・さん・・・さん・・・!いや、いやだよ・・・いや・・・いやぁぁぁぁぁぁ!!』
『のことよろしくな』
それが、さんの最後の言葉だった。
その言葉と、の悲痛な叫び声が・・・
俺の頭から、ずっと、ずっと、離れないでいる。
君を奪い尽くす、僕の全てを懸けて
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